東京から鹿児島へ〜フェリーで帰省してみた〜

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 2019年、私は社会人になって初めて、暦通りの休みになった。そのため、初めて年末の帰省を行うことになった。

 そして皆さん覚えているだろうか、2019年から2020年にかけての年末年始は9連休だったのだ。仕事納めの翌日の東京⇨鹿児島の航空券を調べてみると信じられない高さだ。いつもの中国、台湾、韓国行きの航空券代を優に超えている。久しぶりに学生の時のように時間はあるがお金はない状態になった。

 そうなったら飛行機を使わないで陸海路で帰ってみようと思い、新幹線で大阪まで行き、観光をしたのちに宮崎までフェリーに乗ることにした。その時のおはなし。

 

特急ひかり・名古屋のきしめん

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12月28日11時の東京駅。このタイミングの東京駅に興味津々で来たのは私以外いないだろう。これが帰省ラッシュというものかと初めての光景に驚く。そしてこの中に鹿児島まで行く人もなかなかいるまいと思った。基本的には太平洋ベルトに実家がある人々なんだろう。

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数分に一度の頻度で出て行く東海道新幹線に乗る人の波は途絶えることが無い。のぞみに乗るとどこまでも座れないと考え、ひかりに乗ることにした。この作戦が功を奏し、着席することができた。
f:id:sampit77:20210303081511j:image12:03発ひかり471号岡山行きに乗車。
f:id:sampit77:20210303081533j:imageこれは大人のハッピーセットである。ダイヤモンド社のガイドブック(地球の歩き方)以外はあまり好きではないのだけど、この昭文社のさんぽ地図は地図がメインだからなかなか好きだ。
f:id:sampit77:20210303081500j:image14時01分名古屋着。
f:id:sampit77:20210303081526j:imageここで一度立ち寄りたかった名古屋駅ホームにあるきしめん屋・住よしへ。
f:id:sampit77:20210303081518j:imageこれが一番シンプルなきしめん。鰹節が多くとても満足感が強い。麺も食べ応えがあって、鰹出汁がとても効いている。それでいて350円。感覚として600円は払ってもいい。
f:id:sampit77:20210303081514j:image名古屋から京都までのぞみに乗ってみた。やはり人で溢れていた。人と荷物に押され続ける。

f:id:sampit77:20210303203418j:image京都に到着。この日は大阪に宿をとっていたが一度京都で降りて、京阪電車に乗って伏見稲荷に行くことに。
f:id:sampit77:20210303203407j:image初めての京阪、伏見稲荷駅にて。京阪グリーンが京都の空に映える。
f:id:sampit77:20210303203414j:image参道は賑やかだ。コロナ前なので海外からの旅行者も大変多かった。
f:id:sampit77:20210303203435j:image千本鳥居というらしいが、千本どころじゃなさそうだ。
f:id:sampit77:20210303203444j:image観光客があまりに多く、こういった人気(ひとけ)のない写真は滅多に撮れなかった。
f:id:sampit77:20210303203354j:image途中、道が分かれて迷った。上り坂が果てしなく、どこにゴールがあるのか?そしてゴールまで行くと何があるのか?そもそもゴールとは何なのか?重い荷物を背負いながらの自問自答が続く。そして、綺麗な景色が見えたらそこをゴールにしようという決めた。
f:id:sampit77:20210303203447j:imageそして程なくしてゴールとなった。夜になろうとしている京都の街並み。淡い街の光が山と夕焼け空に溶け込んでいる。ここで日没まで景色の移り変わりを見たかったけれど、帰りの道中を考えて引き返す。英語、中国語、フランス語(多分)、イタリア語(多分)と色々な言葉が聞こえてくる。彼らは何を思って何を話しているのだろう、
f:id:sampit77:20210303203351j:image伏見稲荷を後にして、宿のある大阪へ。京阪と大阪メトロを乗り継ぎ、上本町近くのホテルにチェックイン。

鶴橋コリアンタウン

上本町から一駅歩くと鶴橋に着く。ここはコリアンタウンの一面もある街。夕食は豪華に焼肉でもと考えた。f:id:sampit77:20210303203358j:image鶴橋駅に到着、ガード上は大阪環状線
f:id:sampit77:20210303203411j:image戦後すぐの建物がずっと残っているのだろうか。あまりに古いアーケードに胸が高鳴る。
f:id:sampit77:20210303203425j:imageキムチ専門店などもある。
f:id:sampit77:20210303203440j:image通路はとても狭い。闇市から発展してきたのだろうか。
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f:id:sampit77:20210303203432j:imageアーケード内の本屋さん。仕切りもなく商店街と面的につながっているのは一周回って斬新に見えた。
f:id:sampit77:20210303203429j:imageそして一人焼肉。サンチュを巻いて食べる韓国式。全く他人を気にすることなく、全部自分が食べられるというのはとても幸せだ。f:id:sampit77:20210304133113j:image鶴橋から大阪メトロ千日前線でなんばへ。散歩をすることにした。
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f:id:sampit77:20210304133102j:image道頓堀近く、本場のかに道楽だ。日程に余裕があったらひとりかに道楽もしてみたかった。
f:id:sampit77:20210304133109j:image御堂筋のイルミネーションが綺麗。道頓堀の猥雑な雰囲気の近くにこんな整然と美しい通りがあるなんて。モダンな佇まいの高島屋があったりと、赤羽のすぐ隣に東京でいう銀座や表参道があるようだった。
f:id:sampit77:20210304133058j:imageそして、いわゆる大阪のイメージである道頓堀。
f:id:sampit77:20210304133045j:image道頓堀川、ここに飛び込む人がいるとは考えられない穏やかさだ。
f:id:sampit77:20210304133053j:image道頓堀は街を東西に横切っていて、御堂筋は南北に走っている。〇〇筋は南北に走る通りで、〇〇通りは東西に走っているとのことらしい。心斎橋筋のアーケードは御堂筋の一本隣の商店街だった。知っている地名と、場所が紐付いてきた。
f:id:sampit77:20210304133050j:imageホテルまで今度は地下鉄ではなく近鉄で帰ってみる。大阪は都心まで私鉄が伸びているから色んな手段がある。

阪堺電車で大山古墳へ

f:id:sampit77:20210306101234j:image翌朝も美しい冬晴れに恵まれた。天王寺駅より、遠くに通天閣が見える。阪堺電車に乗って、堺の大山古墳に行ってみることにした。
f:id:sampit77:20210306101241j:image阪堺電車は、大阪と堺を結ぶいわゆる路面電車あべのハルカスの麓から出発して行った。
f:id:sampit77:20210306101249j:image路面電車の走る鹿児島出身の私としては何とも懐かしい雰囲気。地下鉄とは違い、速度も遅いためゆっくりと時間が流れていく。
f:id:sampit77:20210306101253j:image大阪の高級住宅地、帝塚山。専用軌道ではなく、道路の真ん中を通って行く。事故とか起きないのだろうか。線路が天王寺からまっすぐ南下しているので、あべのハルカスがずっと見えている。
f:id:sampit77:20210306101157j:imageできるだけ多くの私鉄に乗りたかった私は、途中神ノ木と言う電停で降りて、南海電車住吉東駅へ。
f:id:sampit77:20210306101311j:image南海高野線三国ヶ丘という古墳近くの駅へ。
f:id:sampit77:20210306101328j:image三国ヶ丘で降りるとすぐに大山古墳があったが、完全に裏手。ぐるっと半周し、正門へ。半周するのに15分かかる。正直、濁った川と林があるだけだった。しかし、ここは裏手だ。正面に回ったら見え方が違うかもしれない。と期待を込めて歩き続ける。
f:id:sampit77:20210306101324j:image正面へ。日本最大級の前方後円墳であるとはいえ、地上から形は全く分からなかった。巨大だからこそなのかもしれない。三国ヶ丘から半周したので、1人のお墓としての相当なる規模感は体感できた。

南海バスで堺の市街地に来て、昼食を。
f:id:sampit77:20210306101231j:imageここは工場かと思いきや蕎麦と書いてある。どういうことなのか。気になったけどここは通過。
f:id:sampit77:20210306101317j:imageげこ亭というお店で昼食を。堺のお店を調べていたらここがとても美味しそうだったので、目星をつけていた。好きなおかずを選んでいくスタイル。
f:id:sampit77:20210306101200j:imageおでんと鰤の照り焼きとナスの揚げ浸し(だったはず)を選んだ。ここには飯炊き仙人と呼ばれる方がいるらしく、お米がふっくらしており大変美味しい。炊き方って大事だ。
f:id:sampit77:20210306101314j:image再び阪堺電車大阪市内へ。乗っていた電車は我孫子道駅止まりで、乗り換えのため15分くらい待つ。風情のあるアーケードとそこを歩く人々の日常を垣間見る。
f:id:sampit77:20210306101208j:image阪堺電車大阪市内での起点が二つある。天王寺通天閣近くの恵美須町だ。行きは天王寺から乗ったので今度は恵美須町行きに乗ってみた。
f:id:sampit77:20210306101204j:image途中、面白そうなアーケードが見えたので今池で降りてみる。
f:id:sampit77:20210306101307j:image降りてみてハッとしたのだが、ここはドヤ街として有名な西成のど真ん中だった。
f:id:sampit77:20210306101303j:imageアーケードに酔っ払いの音痴な歌声が響く。その声をかき消せる程の雑踏はそこに無く、通りを歩く人々はその音楽を、その日常を受け入れて過ごしているように見えた。明らかにお店で歌っている人、飲んでいる人の身なりや雰囲気は、他の街とは違う。お店を覗くこと、目を合わせることだけでも緊張感があった。ほとんど目にすることはないが、この国にも表と裏がしっかりとある。

神戸港からフェリーへ

今池の商店街を離れて、電車で神戸を目指す。そろそろフェリーの時間が近づいてきていた。
f:id:sampit77:20210306101245j:image16:10阪急梅田駅、横に並ぶ阪急電車
f:id:sampit77:20210306101228j:image車体のカラーは阪急マルーンという色合いらしい。東京の私鉄にはない上品さを感じる。この阪急マルーンのおかげなのだろうか。
f:id:sampit77:20210306101238j:image17:10頃、無事予約票をチケットに交換でき、いよいよ乗船へ。
f:id:sampit77:20210306101149j:image18時、船は神戸港を出港した。乗客は神戸の夜景を甲板から眺める。

船内は家族連れ、トラックの運転士たち、バイク乗りで溢れていた。私は一番安いチケットを買ったので、雑魚寝スタイル。寝返りを打つと隣の人に肩がぶつかりそうなスペースで本を読んだり、他の人の会話を聞いたりして過ごす。
f:id:sampit77:20210306101214p:image船は紀伊半島と淡路島の間を抜けて太平洋へ向かっていく。太平洋が近づくにつれ、電波が悪くなり、そして揺れるようになる。甲板に出ると、もう周りは漆黒の海しか見えなかった。宮崎の名産を前面に打ち出したバイキングを食堂で食べて、お風呂にも入る。清潔感があるとは言えなかったが、船内で湯船に浸かれるなんて思ってなかった。

夜になると船は太平洋に出てずっと揺れている。横になると酔いそうで眠れず、船内を彷徨いて眠気が来るのを待った。少しだけ横になって眠れたが、すぐに目が覚めてしまった。
f:id:sampit77:20210306101321j:image外に出てみると遠くに宮崎が見えていた。シーガイアの高層ホテルがポツンと見える。歯を磨いて、コーヒーを飲むと気持ちがスッキリしてきた。
f:id:sampit77:20210306101300j:imageそして翌8:30頃、フェリーは宮崎港に到着した。実に14時間半に及ぶ船旅だった。
f:id:sampit77:20210306101224j:image羽田から飛行機に乗ればたったの1時間半だが、道のりをあえてゆっくり帰ってみる。これもまた東京と九州が遠く離れていることを実感できて良き旅だった。
f:id:sampit77:20210306101257j:imageそして大晦日、実家近くから見た桜島。この景色を見ていつも小学校に通っていたなと薄まりつつある記憶を振り返る。こうやって2019年を締め括ることができた。
f:id:sampit77:20210306101153j:image年明け早々戻ってきた東京・下高井戸からの景色。遠く離れているといえども、空の色と美しさは変わらなかった。2020年、今年はオリンピックがあって目まぐるしい一年になるのかなと思ったものだった。

 

おしまい。