横浜が好きだ。
港町の自由な雰囲気、洗練さ、そして人間くささが混在する横浜。しかし、地図を広げてみると意外と行ったことがない地域の多さに気付く。訪れるのはいつも横浜駅やみなとみらい付近の中区や西区ばかりだった。
どうしたら横浜を体系的に知ることができるだろう、もっと横浜を知りたい。
その答えを私は市内に毛細血管の如く張り巡らされたバス路線に求めた。バスに乗り続ければ電車では辿り着けないディープな横浜を知れるのではないか。
そこで私は市内を満遍なくカバーしてそうな横浜市営バスを乗り倒すことを決めた。ただ目的なく乗るだけではゴールがない。そこでゴールを『横浜18区全てを巡る』ということに定めた。加えて次のルールを決めることでゲーム要素を増やしてみた。
・全区制覇に使う交通機関は市営バスのみ。
・複数日に渡る時、一筆書きになるように開始する場所は前回到達した地点から。
自由に色んなところに行くのが好きなのに、ルールで縛った方が面白さが増すというのは不思議なことだ。
近場とはいえ私にとって壮大な旅行となった。その時の話を早速書き起こしたいこうと思う。
https://www.city.yokohama.lg.jp/kotsu/bus/norikata/busmap.files/0018_20210713.pdf
こちらのリンクの路線図を開きながら読んでいただけたらと思います。
1日目:2020年5月24日 青葉区・青葉台駅前からスタート
自宅から横浜方面に出かけるときは、大抵渋谷駅で乗り換えて東横線で向かう。しかし、今日は横浜全区制覇の記念すべき1日目。折角だからいつもとは違う行き方をしてみた。
東急世田谷線始発駅である下高井戸駅からスタート。世田谷線で終点の三軒茶屋へ向かい、三軒茶屋で田園都市線に乗り換えて青葉台へ向かった。
多摩川を越えて神奈川へ。
旅のスタート地点、青葉台駅へ。まず青葉区を制覇した。(1区/18区)
東急のお膝元なだけあり、東急バスが覇権を握っているが、市営バスの乗り場もある。
最初の路線は、23系統(青葉台駅発→若葉台中央行)。車内で一日乗車券を購入する。
運転士さんに声を掛けると、手書きで日付を記入してくれた。ICカードでの一日乗車券が多くなった今、こういう乗車券は嬉しい。14:30頃発、横浜線の十日市場駅まで向かう。環状4号線に沿って伸びる路線、駅前は街路樹が生い茂り、品の良い私鉄沿線住宅街という感じであったが、東急バスの営業所のある交差点を抜けると、途端に郊外の幹線道路のような雰囲気に。そして間もなく十日市場駅へ。
14:45頃、10分足らずで十日市場駅前に到着。ここはもう区界を越えており、緑区制覇となった。(2区/18区)
四日市や五日市という地名同様、中世の頃から十の付く日に市が開かれていたそう。街の歴史は古いが、駅の開業は昭和54年とそこまで古くないみたいだ。確かに、駅前に商店街があるわけではなく環状4号線沿いにポツリと駅がある感じ。殺風景といえば殺風景だ。
序盤からだいぶマイナーな横浜から始めている感が否めないが、どんどん先に進む。2つ目の路線も23系統(長津田駅発→中山駅行)
23系統は幾つか運行形態があるみたいだった。途中の十日市場から乗車し、終点中山駅を目指す。中山駅は横浜線と地下鉄の駅で十日市場の隣駅。バスは横浜線と並走する。
中山駅前の商店街にバスが入ったので、駅一つ手前の台村町バス停で降りて商店街を歩いてみる。
中山駅周辺は商店街も大きく、この辺りの拠点のようであった。ちなみに、駅周辺は引き続き緑区であり、区役所も中山駅近くにあるみたいだ。相鉄バスと神奈中が駅に乗り入れていた。
15:10頃、3つ目のバスに乗車。今度は39系統(中山駅発→横浜駅西口行)。中々の長距離路線だった。途中市営バスの緑営業所を通る。バスの営業所の上が住居スペースになっていた。都営バスでもこのタイプを見かけるが社宅なのだろうか、ここに住めば始発のバスにすぐに乗れて利便性が高そうだ。横浜線と付かず離れずで走ってきたが、小机駅を過ぎるとバスは横浜駅方向へ、横浜線は新横浜駅方向に分かれていく。この辺りから少しずつ横浜市街地といった雰囲気を感じた。
岸根公園。地下鉄ブルーラインで新横浜の一つ隣。ラグビーワールドカップを横浜スタジアムで見て、ここまでビールを飲みながら散歩をした良い思い出がある。
15:52、岸根公園角にある六角橋北町バス停で下車。40分程の長いバス旅であった。ここで港北区制覇(3区/18区)
六角橋は賑わう商店街が有名だが、商店街は東急白楽駅の近くのためこの辺りは少し離れている。九州出身の人間には懐かしい、ベスト電器の看板があった。
この辺りが区界らしく、神奈川区も制覇。(4区/18区)
乗りたいバスまで時間があり、岸根公園で休憩。開放感のある素敵な都市公園。
レアなバスで大口駅を目指す。291系統に乗車。9時から16時の間に1時間に一本という横浜とは思えない本数の少なさ。16:28発の終バスに乗り、横浜線大口駅へ。
16:41、南国間の溢れる駅舎の前に降り立つ。ちなみに大口駅も引き続き神奈川区。
大口も駅前商店街が立派。長い商店街を南下して国道1号線へ。
商店街は国道1号線の向かい側にも続いている。六角橋商店街と共に横浜三大商店街と言われることもあるらしいが、サイトによって三大商店街に選ばれている地域が違ったりする。真の三大商店街は一体どこだ。
バスを待ってる時間、ふと景色をぼんやり眺めてみる、これも一興。
17:01、29系統に大口通から乗車し横浜駅へ。神奈川新町付近、京急の車両基地があるおかげか、視界が開けみなとみらいのビル群が綺麗だ。
京急の神奈川駅付近。この辺りは旧東海道の神奈川宿となっている。
17:12、10分程で横浜駅に到着した。ここで西区制覇(5区/18区)。
横浜駅のバスターミナルは1号線を挟んだ横浜駅の反対側。コロナで閑散とした地下通路を眺める。
今度は横浜駅より103系統根岸台行きに乗車。
ふと野毛坂で降りてみる。この辺りを散策するのがかねてより大好きだ。「野毛」 という地名に惹かれる都民である。
小さな路地は坂を登る。
野毛坂を登り、野毛山公園を目指すことにした。
駅やみなとみらいの近くなのに、辺りは鬱蒼としている。
もう閉園時間だったが、動物園もある。
野毛山公園からの眺め。海側の横浜市街地方向を見渡せる。
丘の上にあるから、常に見晴らしがいい。
1964年の東京五輪で、サッカーやバレーボールが横浜で行われたことを記念する碑が建っていた。
この後、10分足らずの乗車時間だったが野毛山動物園から野毛町へ、89N系統で移動。これにて中区制覇となった。(6区/18区)意外とすんなり三分の一の区を制覇した。バス停の近くに美空ひばりの像があった。かつてこの近くにあった横浜国際劇場に多く出演していたとのこと。
本来であれば週末の18時、居酒屋で一杯やっている人達でごった返しているだろうエリアだが、コロナ禍ということもありまばらだ。
野毛で一杯ひっかけるかどうか悩んだ末やめた。まだこの頃はコロナとはどんな病気か分からず、飲むことに気乗りしなかったのだ。
18:17、156系統で野毛町から滝頭へ。バスは平戸桜木道路を京急と並行して進み、南太田駅の手前で左折し、地下鉄吉野町駅を通り国道16号線を走る。国道16号に入ったあたりから郊外の幹線道路といった感じだ。道沿いに掘割川という川が並行している。あまり綺麗そうな川ではないが、それがまた大都市の町はずれという雰囲気を醸し出していて良い感じだ。
18:31、終点の滝頭に到着。ここは、市営バスの営業所であった。またここも社宅のような住居スペースが併設されている。ここで磯子区制覇となった。(7区/18区)
昔はこの辺りまで市電が走っていたそうで、営業所の隣に市電保存館があったみたいだ。昔の路面電車の走っていた場所を把握するとより面白くなりそうだ。
そこそこ良い時間になってきたので、初日最後のバスに乗車。9系統滝頭発保土ヶ谷駅行きで、弘明寺を目指す。
滝頭は海の近くだが、弘明寺は小高い山の上。つまりこの路線は山登り路線であった。山といえども周囲はびっしりと家々が並んでおり交通量も多い、おまけにバス同士も離合するのである。
細くかつカーブが続く道を走り抜けていく。バスの運転士さんの技量に感服。
18:56、弘明寺に到着。ここで南区制覇(8区/18区)
弘明寺は住みやすそうな大きなアーケードがある。お寺に続く参道でもあるのかな。
アーケードの中で大岡川を渡る。アーケードの商店街で橋がある光景は初めて見た。
商店街の終わりに、街の名の通り弘明寺がある。そこから坂道を登ると京急の弘明寺駅だ。
1日目はこれにて終了。順調なペースで進むことができた。
しかし、まだこれからが大変なのだ。続く…
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