富山旅行、2日目。前日はアルペンルートで長野から立山連峰を越えて富山市に到着しました。前回の記事はこちら。富山旅行記 Ⅰ・長野発アルペンルート経由富山行き - 旅の記憶
この日はJR氷見線に乗ります。氷見線に乗ろうと思った最大の理由は、この写真の景色を見てみたかったから。途中の雨晴(あまはらし)駅から眺める、富山湾と立山連峰。7月なので山頂の雪こそありませんが、湾に迫り来る3000メートル級の山脈の景色を一目見たいと思っていました。他にも、名物・氷見うどんを食べたかった、そして氷見線のLRT化について報道されていることも理由としてありました。
LRTはいわゆる先進技術を用いた路面電車。今は国鉄時代からの気動車が現役で、風光明媚な海沿いを走っていますが、LRTになってしまうと、地域交通が残されるという面では良いですが、旅情は薄れてしまいそうだよな…と。そして、今のうちにキハ40のディーゼル音、長閑な揺れ、扇風機の回る車内、全身でローカル線の旅情を感じておきたいと思ったのです。
朝、富山市は快晴。散策しながら富山駅に向かいます。
環水公園、ここのスタバが映えるとやらで有名ですが、公園も水も綺麗です。ここは富岩運河という運河で、神通川に沿い富山湾へ注いでいます。散策をした後に富山駅へ。駅のコンコースからシームレスに路面電車へ乗り換えられる構造は、とても合理的でかつ開放的に感じます。折角の富山旅行なので、朝から名物の鱒寿司を食べてみます。
駅構内のベンチに座って、鱒寿司の朝食。完璧なる非日常。
それでは、氷見線の旅をスタートします。まず、あいの風とやま鉄道(新幹線開業前の旧北陸本線)で、富山第二の都市、高岡へ。
列車は駅を出てすぐに神通川を渡ります。富山平野を走り抜け、25分ほどで高岡へ。今度は氷見線に乗り換えです。オレンジ色のキハ40が待っていました。ガラガラガラとディーゼルエンジンが響き、車内では国鉄マークの入った扇風機が回っていました。海辺の終着駅にこれから行くんだと心が躍ります。
対向列車とのすれ違い。
氷見線は風光明媚な海岸線を走るのかと思いきや、最初は意外と工場群や港湾施設の脇を走り抜けて行きます。
しばらくすると、イメージしていた景色、否、それを超える景色になりました。窓いっぱいに広がる富山湾が綺麗です。初夏らしい景色を見ること30分ほど、列車は終点の氷見駅に到着です。
白い駅舎が海辺の町の雰囲気を出しています。終着駅らしい駅舎ですが、当初はこのまま線路を延伸して能登半島を横断し、石川の羽咋まで結ぶ計画だったそうです。氷見の名物は寒ブリと氷見うどん。上の写真の瓦の装飾もブリなのでしょうか。ブリも惹かれますが、7月なので氷見うどんを食べることにします。駅から少し離れたところに氷見番屋街という道の駅のような施設があるそうなので、そこを目指してバスに乗ります。
氷見うどんを食べます。カウンターには富山弁の説明がありました。空港名にもなっている「きときと」は新鮮なという意味なのですね。
氷見うどんは手延べで細い麺、こしがあります。喉越しがいいけれど、噛めば噛むほど味がする、いいとこ取りという感じのうどんです。
氷見番屋街をぶらぶら。
再び駅へ。車止め。
腕木式の信号機も記念に残されていました。
少し滞在時間は短めですが、氷見を発ち、雨晴海岸へ向かいます。
雨晴駅のすぐそこに海。駅から5分ほど海沿いを南下して、道の駅に向かってみます。雨晴海岸は、源義経が平泉に落ち延びる際にここで雨が止むのを待っていたことが地名の由来だとか。道の駅の2階部分にはオープンデッキがあって、氷見線と富山湾を一望できました。オープンデッキからの眺めは列車が丁度通過するタイミングで撮ることにしました。それまでの間、ビールを片手に海岸へ。道の駅から、富山市、立山連峰のある南を向いた眺望。列車の通過に合わせて沢山の人が一眼レフを構えています。望遠レンズを組み合わせて立山連峰と綺麗に写すのでしょうね。スマホで撮影するとこんな感じです。反対側、能登半島側も眺望が良いです。氷見は石川との県境の街、そのため能登半島も間近です。
雨晴駅にあった、冬の海岸の写真。実際にこの日に見た景色より立山連峰がクッキリしています。きっと寒い時期に来ると、より絶景なのでしょう。ただ、磯で心地よくビールを飲んで、風景をゆっくり眺められたので夏に来て良かったと思いました。さて、再び雨晴駅から氷見線に乗ります。このまま富山に帰るにはまだ時間が早かったので、高岡を散策することに。伏木(ふしき)駅で降ります。実は、高岡は路面電車が走る街。日本で県庁所在地ではなく路面電車が走っている街は、函館、豊橋、堺、そして高岡です。それら他の都市と比較して高岡は人口16万人と規模は小さめ。10万都市を路面電車が走る景色を見てみることにしました。近くに路面電車が走っていそうな雰囲気はないですが、橋を渡ると駅があるはず。そして、ここは江戸から明治にかけて北前船の寄港地で栄えた街だそうです。今では静かな駅ですが、かつては栄えていたようです。小矢部川を伏木万葉大橋で渡ります。対岸は工業地帯と港湾施設です。あちら側に万葉線という路面電車が走っています。大伴家持の歌碑がありました、万葉大橋なだけあります。そして、情景を思い浮かべると静謐で美しい歌ですね。大伴家持は雨晴海岸についても歌を残しているそうです。橋を渡りしばらくすると電車通りに出ました。道路が青くなっている部分に「電車のりば」と書かれています。不意に現れた…駅?こんな簡素な、かつ道の真ん中に駅があるとは、まさに"路面"の電車です。確かに少し先に屋根のついたバス停のような待合室がありました。電車は時間通りにやってきて、この場所(吉久停留場)から乗車することができました。万葉線は、かつては加越能鉄道が運営していましたが、今では鉄道を手放し、加越能バスとして再スタートしており、鉄路は第三セクターの万葉線により運営されています。一旦専用軌道に入ると、田んぼの中を走り抜けました。路面電車で田んぼの景色を見るのは初めてかもしれません。
車内の様子。先程の田んぼの景色から10分もしないうちに市街地に入りました。街中で降りてみます。ここでも停留場にホームはなく、路面に降ります。元来路面電車はこういうものだったのだと思いますが、今の時代、新鮮ですね。初めての体験でした。後ろから車が来ないかヒヤヒヤします。片原町交差点を曲がる路面電車。曲がった先に高岡駅があります。市街地は歩道がアーケード上になっていて立派ですが、歩行者は少なくお店もシャッターを閉めているところが多い印象です。高岡城址や高岡大彿など、見所は他にもありましたが、山町筋という通りを訪れてみました。
ここは昔、城下町であった時、北陸道沿いに開けた商人の街だそう。現存する建物は1900年の大火後のものだそうで、蔵づくりの家々、そして煉瓦造りの建物が並んでいました。路地を抜けて再び路面電車の走る大通りへ。
商店街を歩き高岡駅を目指します。
万葉線と加越能バスのツーショット。かつては同じ会社だった両者。
高岡駅で路面電車は終点です。高岡は藤子F不二雄さんの故郷、それを記念してドラえもんのポストが駅にはありました。高岡銅器という伝統産業で制作されているそう。ドラえもんを見たら、無性に食べたくなって、駅でどら焼きを買いました。
さて、氷見線沿線を目一杯楽しみましたので、富山市へ戻ります。
つづきはこちら、富山市内を巡ります。富山旅行記Ⅲ・富山市内散策 - 旅の記憶