※前回の記事はこちら→オマーン横断旅行記⑥ 夜行バス870キロの旅 - 旅の記憶
掴みきれない街・サラーラ
朝7時半、夜行バスから降りると、雨粒が額に当たった。オマーンで雨に降られるとは思いもしなかった。
バスから降ろされた場所を地球の歩き方で確認する。どうやら街の中心部にはいるようだ。確かに道は広く、建物も大きい。しかし、都市の活気みたいなものが一切無く、えも言えない違和感がある。
もちろん朝の7時台というのも理由だろう、人のいない大通り、無機質なビル、そしてどんよりとした雲…。なんだかマスカットやニズワとは雰囲気が全く違う。強盗にいきなり襲われたらなす術がないなと不安を覚える。
市場へ行こう
とりあえず人が多そうなところへ行こうと思い、近くの市場へ来てみた。
入口には木々が茂っていて、乾燥大国オマーンらしくない!と思う。まだ3日目の新参者なのに。
市場の中に入ると、まずデーツを売るお店が見えてきた(これはオマーンらしい!)。その奥に進むと魚が所狭しと並べられていた。さすが海沿いの町だ。
さらに奥へ進むと魚を捌く場所もあった。清潔な市場で匂いも全然気にならない。
干物のようなものも発見、日本のものと違わない。
外では魚の積み下ろしをやっていた。マスカットやニズワとは違い、白い民族衣装の人がほぼおらず、顔つきもアラブだけでなくアフリカの雰囲気も感じる。この地域差はなんなのだろう、もっと詳しく知りたい。もしもアラビア語が話せたら、市場の中に沢山いる暇そうなおじさんに質問してみるのに。
市場を散策していると青果市場も見つけた。スイカ、カボチャ、バナナなど、全部サイズが大きい。案外カメラで撮っていてもにこやかに微笑んでくれる人が多くて安心する。
ショッピングモールで朝食を
市場を出て再び街へ出る。朝ごはんを食べたい。ついでにスマホの充電もしておきたい。
道すがら見つけた薬局。看板に描かれたマークが、アラジンのランプのようで小洒落ている。
残念なことに開いているお店が全然見つからない。青春18きっぷで早朝の地方都市に降り立った時のようだ。
ぼんやりとモスクを眺めていても腹が減るばかり。
色々思案して、昨日のニズワでの体験をもとに、ショッピングモールへ行ってみることにした。やはりこの町でもショッピングモールは賑わっているのではないか。そんな仮説を立てたのだ。タクシーをピックアップして向かってみる。初日、空港から乗ったタクシーの運転手があっち側の変態だったので、防御策として後部座席に座る。ドライバーはクタクタのシャツのじいさんで少し頼りない。メーターも動いておらず、もはや正規運賃がどのくらいかは分からないが、値切る気力は無かったので言い値を渡した。
さあ着いたぞ、巨大ショッピングモール。Salalah Gardens Mallというところ。フロアマップを見ると飲食エリアも広そうだ。
ニズワの時と違いガラガラで、誰もいない店内を進む。ただ営業中ではありそうでひと安心。オマーンらしいご飯が食べられそうなお店に入る。充電もできた。
オマニブレックファーストみたいなメニューだったはずだ。各プレートの料理名を聞き逃してしまったのが悔やまれる。豆のペーストのようなものが印象的。結構強めの塩味で、パン(ホブズ)につけながら食べてもまだしょっぱい。喉が渇いてきた。ただ、ホブズ自体はほんのり甘く、良い香りがした。
「乳香博物館」へ行こう
お腹も満たされたので、本腰で観光をしてみることに。時間の限られるサラーラ滞在中にぜひ足を運びたかったのは乳香博物館。サラーラは、近郊で採れた乳香(フランキンセンス)の積み出し港として、交易で栄えた町なのだ。初日にマスカットのスークで焚かれていて、エキゾチックな香りが気になっていた。郊外の荒野まで足を伸ばせば、自生している木々も見ることができるらしいのだが、この日そこまでの時間はなく、博物館に行くことにした。
とはいえ、博物館も市街地からそこそこ離れていて、ショッピングモールからは10キロほどの距離。
タクシーを捕まえて、海沿いにある乳香博物館へ。
博物館へ入場すると中庭の真ん中に立派な乳香の木が鎮座していた。
おぉ、これが乳香の木か。早速のクライマックス。もちろん近寄っても香りはしない。木の皮を剥いで採取した樹液が、乳香になるそうだ。現物を見れて嬉しい。
紀元前1000年頃から乳香は高値で取引をされており、アラビア海や砂漠を超えてエジプトをはじめ様々な地域に運ばれていたのだとか。博物館には交易に使われていた船や道具が展示されていた。
博物館の隣には、世界遺産のアルバリード遺跡があった。ここが乳香の交易都市の跡ということらしい。
見慣れない鳥が視界を横切っていく…。
遺跡内の遊歩道を進んでみたのだが、正直、何の跡なのやら素人目には分からず、感動するタイミングを逃したまま出口まで来てしまった。
そのまま海に出られたので、アラビア海の海風を浴びてみる。この海の向こうはアフリカの角・ソマリアだ。
街に戻ろうと思うものの、タクシーが来そうな気配はない。博物館まで戻って呼んでもらうのが一番堅実な方法だが、微妙に離れてしまったので、めんどくさい。地図を見れば街までは5キロくらい。歩いてしまうか…。東京〜京都間の歩き旅を経験した身としては大した距離ではない。
謎の果実「チークー」を食べる

ヤシの木の茂みを抜け、ポツンと佇む白亜のモスクを横目に30分ほど海沿いの道を進む。するとようやく人の気配が。道沿いにフルーツ店があるようだ。しかも一つではなく、何店舗も連なっている。
定期的に車も来て、フルーツを買っていく。「ハロー」と店主の親父たちへ挨拶しながら、陳列された果物を物色していく。バナナ、サトウキビ、スイカ、パパイヤ、そして椰子の実といったラインナップの中に、ジャガイモのような茶色い果物もあった。なんだろう…と覗き込んでいたら、「これはチークーだぜ」と店主のおやじさんが教えてくれた。見た目とは裏腹に触感は熟していそうで柔らかい。おやじさんは手に取ったチークーをひとつ剥いて食べさせてくれた。手が果汁で汚れて写真は撮りそびれてしまったが、味は干し柿のような優しい甘さで美味しい。インドや東南アジアでも食べられる果物らしく、つわりに効くことで有名らしい。
チークーの代金を払おうとすると「要らない、要らない」と制止させられる。優しさに感謝…。代わりにココナッツを買わせてもらった。歩き旅の良い水分補給だ。
行きにタクシーで通った道を思いだしながら辿っていく。相変わらず人気が無い場所が続いて心細い。そんな心情を見透かすかのように、変な輩に絡まれた。車に乗った若い兄さんが、何度も何度も歩いている私の前を通りかかって、窓全開の運転席からニタニタと話しかけてくるのだ。その回数は1、2回ではなく、10回をゆうに超えて、その執拗さが異常で気味が悪かった。町の中心部まで歩こうと思っていたが、いち早く逃れることが先決に感じたので、たまたま通りかかったタクシーに乗って難を逃れた。
再び、マスカットへ
サラーラでは一泊せず、飛行機でマスカットに戻る。オマーン旅ももう終盤、翌日はもう出国してドバイへ向かう。
サラーラの街を再び歩いてみるも、面白そうな場所も特に見つけられず、空港へと向かうことにした。空港は路線バスで行けるとのことだったので、モスク近くのバス停に行ってみるも、時刻表も無く、このバス停で合ってるかも分からなかった。地元の人に聞いても、イマイチ釈然としない。30分ほど待っても来なかったから諦めて、タクシーで向かうことにした。
タクシーの運転手は、私が日本から来たことを知ると「俺のタクシーはTOYOTAだよ、日本の車は本当に良いよな」と仕切りに褒め称えてくれた。しかしそのうえで値段を結構吹っかけてきた。愛嬌に負けて値切れず、悔しい思いをする。
サラームエアというLCCに搭乗する。機内はてんやわんや。席を移動したいだとか、シートベルトがうまく装着できないだとか、お客さんとCAさんがえらく揉めていた。ただ、少し遅れただけで順調なフライトだった。
隣の席は、白の民族衣装に身を包んだ、お金持ちそうなお兄さん。余裕がありそうな印象だったのだが、小さな揺れでも、ビクッとしていて、人は見かけによらないなと思った。
サラーらからマスカットまでのフライトは90分ほど、マスカットに着いたのは20時を少し過ぎていた。オマーン最後の夜を出来るだけ堪能しようとこのあと足掻くことになる…。