旅の記憶

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鯖街道旅行記③ 夏の日本海、現る

f:id:sampit77:20260401224125j:image前回の記事はこちら→鯖街道旅行記② 歩いて、疲れて、鯖寿司食べて - 旅の記憶

夢の未成線「若江線」を辿る

保坂のバス停で鯖寿司を食べ、近くの自販機で買ったコーラをバス停の小屋で飲む。ぬるくならないように一気に飲むと、喉で炭酸が弾けて少しだけ涼やかになる。そうこうしてると、小浜行きのバスがやってきた。f:id:sampit77:20260401222248j:imageここからのバスは1時間に1本と割と本数があるようだ。1日に1便しかなかった出町柳から朽木までのバスに比べると人の生活が感じられて安心する。

バスは琵琶湖畔の近江今津駅からやって来て、日本海に面した小浜を目指す。私のいる保坂は、まだ小浜より琵琶湖が近い。このバス路線は、福井(若狭)と滋賀(近江)それぞれの旧国名から1文字ずつ取った「若江(じゃっこう)線」という大層な名前が付いている。というのも、元々鉄道が計画されていたが頓挫したいわゆる「未成線」だからのようだ。地図で見てみると確かに若江線とJR湖西線とで京都と小浜をだいぶ最短で結んでいることが分かる(鯖街道には負ける)。そして驚くことに、京都~小浜間の移動は、どれだけ特急を駆使しようとも、鉄道だけの移動より若江線のバスを使う方が速く着けるらしい。バスは整備された国道を軽やかに進む。さっきまでの汗だく歩き旅とは天と地の差である。

両側から山が迫った谷間で、すんなり福井県に入った。朝は京都・出町柳にいたというのに、お昼にはもう北陸にいた。感覚としてすごく不思議だ。このまま行くと、早々にゴールしてしまいそうなので、途中でバスを降りてみる。宿場町の熊川という場所にやって来た。f:id:sampit77:20260401224342j:image

宿場町・熊川

f:id:sampit77:20260401224746j:imageバス停の目の前にある道の駅は大賑わい。どうやら人気スポットのようで、鯖街道を探求している人が大勢いるという訳では無いようだ。道の駅は宿場町の京都側の端、ここから海の方向へ宿場町を縦断してみることにした。f:id:sampit77:20260401224751j:image巨大な石の名前は「大岩」というそう。見た目そのまま。f:id:sampit77:20260401224801j:imagef:id:sampit77:20260401224756j:image道の駅と比べると、かなり観光客はまばら。こんな素敵な宿場町の風景が広がっているというのに!f:id:sampit77:20260401224814j:image路地にぽつりと「御蔵道」という石碑が建っていた。宿場の横を流れる北川(朽木を流れていた北川とはまた別の川)まで船でお米を運んできて、そこからこの道を通って蔵まで運んでいたのだそう。不意に撮った路地にもしっかりと歴史が刻まれている。これこそ宿場町ならではだなと思う。

鯖街道は「直角」に曲がっていた

ここで、歩き終わってから気づいた事実についても触れておきたい。鯖街道は京都から小浜まで直線的に、つまり最短で結んでいると思い込んでいたのだが、実は一度直角に折れ曲がっていたようだ。しかもその折れ曲がる地点は、私が呑気に鯖寿司を食べてた「保坂」の交差点だった。

このことが分かったのは、旅の後、ブラタモリの鯖街道の回を見ていた時。京都から保坂までは、南北に伸びる「花折断層」、保坂から小浜までは東西に伸びる「熊川断層」の作った谷を鯖街道は辿っており、二つの直角に交わる断層を利用して街道は出来上がっていたのである。てっきり南北移動を続けていると勘違いをしていた当時の私は、「熊川宿からさらに、北上するぞ!」と意気込み、真西に向かうバスに揺られていたのであった。

夏の日本海、現る

f:id:sampit77:20260408224337j:image道の駅で降りて1時間後、時間通りに若江線のバスに乗り込んだ。f:id:sampit77:20260408224329j:image熊川宿から先はガラッと風景が変わり、北川の沖積平野の様相を呈してくる。車窓からは一面の田んぼが美しい。f:id:sampit77:20260408224320j:image途中、バスが寄ったJR小浜線の上中駅。「海を見るならバスより列車からが良いかも」と、ふとした思い着きで乗り換えをすることに。この上中駅、計らずも若江線の計画上の終点だった。f:id:sampit77:20260408224345j:imageやってきた列車は東舞鶴行きで、その途中にこの旅のゴール・小浜駅がある。ただ、よくよく地図を見てみると小浜駅はまだ海から遠く、車窓から日本海が見えるのは小浜から先になりそうだった。どうしても車窓から日本海を見たい私は、折角なので東舞鶴まで足を伸ばすことにした。舞鶴は京都府。日本海を見るために福井から再び京都に戻るのは、これまた不思議な話だ。

小浜を出て、しばらく揺られていると…。f:id:sampit77:20260408224333j:image窓一杯に、真っ青な日本海が広がった。f:id:sampit77:20260408224340j:imageリアス式海岸の複雑な地形が生み出した若狭湾。どこまでも穏やかで、どこまでも澄んだブルーに見えた。この中に沢山の鯖がいて、毎日元気よく泳ぎ回っているのだろうか。京都から辿る鯖街道の旅は、彼らの生まれ故郷の日本海・若狭湾を眺めてゴールとなった。

「鯖のみんな、つかまるなよ、京都まで連れて行かれる羽目になるぞ」

 

おしまい。