2020年7月、新型コロナウイルスの第1波がおさまった頃、久しぶりに関東を出て旅をしました。
目指したのは、北陸・富山。今や東京駅から北陸新幹線に乗ってしまえばすぐに着く街。ですが、それでは面白みに欠けますので、立山黒部アルペンルートで向かいました。その時の記憶を振り返ります。
朝、7:30のバスタ新宿。まだ交通量が多くない濡れた道路を、松本からやってきたアルピコ交通のバスが飛沫をあげて駆け抜けます。夜行便が次々とバスタに到着してきます。
私は7:35発、京王バスの白馬線に乗り込みました。府中あたりの景色でしょうか。中央道でどんどん西に進みます。今回は白馬まで行くわけではなく、その手前の信濃大町で降ります。というのも立山黒部アルペンルートの山越えがスタートする街だからです。
1時間ほどで景色は一変。途中のサービスエリアにて。京王バスの高速車のデザインはセンスが良いなと思います。
松本の梓川SAまで来ると晴れ間も見えてきました。長野に入ると空気が変わって山の匂い。伸び盛りの稲を見ながらうとうと。
12時前に信濃大町駅前に到着しました。ここは、立山黒部アルペンルートの起点です。アルペンルートの概略は下記のとおり壮大です。
信濃大町→バス→扇沢→電気バス→黒部ダム→ケーブルカー→黒部平→ロープウェイ→大観峰→トローリーバス(ここで立山山頂の真下を通過→室堂→バス→美女平→ケーブルカー立山駅→富山地方鉄道→富山
これを一つの切符で、そして十分に観光して巡れるのは素敵ですね。
長い山越えの前に信濃大町の駅前で、おやきを食べます。信濃大町は大糸線の通る町。糸魚川と松本の間です。街には人影はなく車の通りもまばら。少しだけ寂しい印象を受けました。
12時15分、まずは電気バスの乗り場である扇沢まで向かいます。
30分ほどすると、標高が上がり美しい森の中へ。
12時50分、扇沢に到着。深呼吸をすると、澄み切った空気で体が満たされます。日常から離れて、旅してる実感が湧きました。出発した時は雨が降っていましたが運の良いことにこの頃にはもう晴れ渡っていました。それでは関電トンネル電気バスに乗ってみます。
乗り場は駅のようです。トローリーバスなのかなと思いきや、2019年から電気バスでの運行になったそう。何が違うのかというと、トローリーバスは架線から電気を得るのですが、電気バスは両端の駅で充電した電気で走行するらしいのです。
車内は普通のバスですが、運行の仕方は信号などもあり電車のよう。
約15分で黒部ダム駅に到着、初めての電気バス体験でした。運営は関西電力というのもまたダムとの関わりであって面白いです。
黒部ダムの駅から階段を登ります。階段を登りきると…一気に3000メートル級の立山連峰が近づきました。あとから調べて知ったのですが、既に1470メートルのところにいたみたいです。展望台へ。上から黒部ダムを眺めます。放水は圧巻です。
立山連峰を望みます。尖った山は剱岳でしょうか。空と山頂が近い。
階段を降りて黒部ダムに近づいてみます。黒部ダムのこの放水は観光用だそう。少し遅めの昼ごはんをダムのそばにあったレストランで。
名物・ダムカレーをいただきます。絶妙に湖面の色も再現されている…ダムのあたりをぶらついてみます。端には沢山の木々が流れ着いていて、クレーンで取り除く作業をしていました。これだけ大きなダムだと山から沢山流れ着くのでしょう。
殉職者の慰霊碑もありました。現在の黒部ダム建設にあたって171名の方が亡くなられたそうです。この標高の場所にトンネルを掘った上でダムを作ったとなると相当な難工事だったはずです…
黒部湖を眺めます。写真では晴れ間が見えていますが、時折傘をさせない強風の中、雨が降ったり止んだりしていました。ケーブルカーの時間も迫ってきているので荒天の中、堤を、放水の真上を歩きます。徒歩で5分はかかったでしょうか。堤から見る景色。放水されていくしぶきに虹がかかっていました。
堤を歩き切ると、トンネルが現れます。
トンネルを歩き続けるとケーブルカーの黒部湖駅です。
14:15頃発車しました。ここは日本で唯一の全線トンネルになっているケーブルカーだそうです。車両も随分レトロだなと思っていたら1969年の開業当初から使われている車両だそうです。ここの車両を新しいものに代替するのは大変そうというか可能なのでしょうか…ケーブルカーの着いた黒部平は標高1828メートル。駅からトンネルを抜けると一気に山並みが近づいています。天気も持ち直しました。ここからはロープウェイ、見晴らしが良いです。
アルペンルートは登山を楽しむ人にも愛用されています。されど乗り物を乗り継げば、普段着で何も用意せずに急峻な山を越えられてしまうのが何よりも非日常的な醍醐味でしょう。
恐らく万年雪なのでしょう。夏の日本で雪が見られるなんて知りませんでした。ケーブルカーの終点・大観峰に到着です。標高2316メートル。ギリギリ寒いとは感じないくらいの気温。
次に乗るトローリーバスまで少し時間があるので、景色を眺めます。空と雲がとても近い。そして7月なのに目の前に雪があります。
15:15頃、立山トンネルトローリーバスに乗車します。こちらは年代物、架線から電気を得ながら走行します。トンネルの中で立山山頂の真下を突っ切りました。
車内は古い路線バスのよう。しかし電気で走るので、静か。
10分ほどで室堂へ。ここがアルペンルートで一番標高の高いところになります。2450メートル。触れるところに万年雪が。折角なのでさわってみました。空気が澄み切っていてとても気持ち良いです。空気の薄さを感じる人は感じるのでしょうか…
そしてここは貴重な雷鳥が住む場所、ですが見かけられずでした。室堂にはホテルもあります。ここに泊まってゆっくり景色や雷鳥を眺めたり星空を観察したりするのもきっと素敵ですよね。標高が高く木々が生えなくなる世界、別世界のようです。
30分ほどハイキングを楽しみ、ここからはとうとう下山です。美女平というところまで一気にバスで下ります。その標高差1500メートル…。雪の降る時期には、有名な雪の大谷といわれる、雪の壁の中をバスで駆け抜けて行く景色になるようです。この日は濃霧の中くだりました。山の天気は変わりやすい…またもや雨です。美女平でバスからケーブルカーに乗り換えます。10分ほどで立山駅に到着。標高475メートル。
ここからは富山地方鉄道で一気に富山駅まで行くことができます。長野から日本海側に抜けました。しかも大山脈を越えて…普通の鉄道や道路では絶対に通り抜けられないところを、色々な乗り物を乗り継ぐことによって越えて行くのは、乗り物好きには興味深い経験でした。
17:20頃地鉄富山行きの電車に乗ります。旧京阪電車です。
路線図は首都圏や京阪神の大手私鉄のものに引けを取らないデザイン。富山市内の路面電車も運営する規模の大きな鉄道会社です。川を渡り、山を抜け…少しずつ人里に近づいて行きます。
途中の寺田駅、乗り換えが出来る大きな駅ですが、番線を示す標識がユニークでレトロです。そして18:35、遂に終点・地鉄富山駅に到着しました。信濃大町を出て6時間超、立山連峰を超えて日本海側の都市、富山に来ました。北陸新幹線が開業したことに伴い、JR側は先進的です。富山地鉄の駅はこじんまりしていますが、終着駅という雰囲気のある良き駅でした。しっかりと駅ビルもありましたし。駅の建物を路面電車が走ります。これも富山地鉄です。
栄えていない方の出口、北口に出て今回のお宿へ。今回の2泊3日の富山旅はいるかホステルというところに泊まりました。ドミトリータイプ。リーズナブルで清潔。とても快適でした。
夜は朴葉味噌を(どちらかといえば岐阜・飛騨高山の方の名物のイメージですが)に舌鼓を打ちこの日は終了です。
翌日は、ローカル線に乗って、氷見を目指します。つづく。富山旅行記 Ⅱ ・氷見線の旅 - 旅の記憶